2013年11月04日

平中が侍従の君に懸想した話−2

平中.gifどしゃ降りの夜、屋敷についた平中はいつもの女の童(めのわらわ)に仲介を頼むと答えが返ってきた。  「人々がお寝みになってから部屋でこっそり会います」というのである。
人々が寝静まってから遣戸の掛けがねを外すと容易に開いた。

「夢のようだ」うれしさに身震いして中に入る。 暗い中に空薫(からだき)の香だけが立ちこめている。 心臓が壊れるほどときめきつつ寝床とおぼしき所を手探る。  
女はそこにいた。 衣一重をきて横たわっている。 髪や肩に手が触れる。 頭つき細やか、髪は氷を延べたように冷たい。 平中はもう何も考えられず、夢中で震えるばかり。 
この時間は短く長い・・・。

・・・と女が言った。 「大事なことを忘れていました。 隔ての襖の掛金を掛け忘れていました。 掛けて参りますから」・・・と言って出て行った。

・・・そのまま女は帰ってこなかった。
もうすぐ夜が明けてしまう。  夜が明けぬうちに平中は逃げ帰らなければならなかった。
「自分を馬鹿な男だと思っているのだろう、ああ恨めしい」
「どうしたらあの女を諦められるだろう」
「なんとかして疎ましい女と思う心を持ちたい」と思った。
posted by 敏文 at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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